2006年 11月 30日 ( 1 )


2006年 11月 30日

【遠足の朝】

‥ボコボコに殴られたって遠足には行こう!
<例のコラム>
 腕力にめざめたのは中学一年生のときです。
 小学生の頃までは人と殴りあうなんて、そんなことを自分が
するなんてとても想像さえできませんでした。
 それが何のきっかけだったのか、ある日、偶然にも人を殴っ
てしまい、その相手を怯えさせ、結果的には喧嘩に勝ってしま
ったのです。特に喧嘩が強い相手ではなかったのですが、そ
れを入り口として、腕力という新たな、それも一瞬にして相手を
黙らせる言語を獲得していったのでした。剣道をしていたことも
あり、武道における間合いの取り方には人一倍自信もあったよ
うに思います。
 けれど、それ以上に腕力に頼る世界に陥ることがなかったの
は、これも剣道をしていたからかもしれません。現代の剣道の
世界では相手に一本を決めて勝負に勝つことはあっても、息の
根を止めるまで相手を叩きのめすことはないのです。
 自分の中にある程度の腕力による可能性を感じながら、僕は
中学3年生になっていました。この事件は、そんな僕のなかの可
能性が引き寄せたものだったのかもしれません。
 ある日の昼休みでした。僕は友人たちとふざけあっていて、廊
下側から教室に向けて窓から身を乗り出していました。その肩が
Gくんの肩に触れたのです。おそらくは、まるでGくんがそこにい
たことなど全く気づかなかったかのように。Gくんとは小学生の頃
からの知り合いです。負けず嫌いのGくんは、喧嘩になってたとえ
涙があふれてきて誰の目にも敗戦が明らかなのにも関わらず、
泣きながらでも死に物狂いになって相手が根負けするまでしがみ
ついていくような男の子でした。その結果、否応なしに誰もが一目
置く存在になっていたのでした。
「なんか、こらー」
 Gくんの低い声が威嚇するように僕の耳元に流れこんできまし
た。Gくんは怒っています。
「ごめん、ごめん」
 僕はとっさに謝りました。その軽い謝り方がGくんの自尊心をさ
らに刺激したのか、Gくんの顔は、それはそれは恐ろしい形相を
呈していました。
「うったくっぞ、わらー!!!」
 最高に攻撃的な怒声がGくんの口から飛び出してきます。
「うったくっぞ」という言葉は、「ぶんなぐるぞ」という意味の熊本
弁です。僕の生まれた人吉市は鹿児島と宮崎の県境にも近い
ので鹿児島や宮崎のイントネーションや方言も混じりぎみです
から、正確には熊本弁とは言いがたいかもしれません。「わらー」
とは、「お前ー」という意味で、河内弁で言うところの「われー」に
相当します。標準語に訳すと「殴っちゃうぜ、きみー」となって迫
力ないことこの上ないのですが、そのときのGくんの怒声には鬼
気迫るものがありました。
 しかし、そのときは昼休みが間もなく終わるということもあって事
なきを得たのですが、僕は放課後の教室に呼び出される羽目に
なったのでした。
 放課後、約束の時間に僕は教室に行きました。心配してついて
きてくれた友人のNくんといっしょに、教室に入った僕の目の前に
は、Gくんとその取巻きの姿が飛び込んできました。
 間もなく、血で血を洗う決闘がはじまろうとしていたのです。
                                   続く・・・
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by cafejien | 2006-11-30 01:23