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2006年 06月 14日

【やさしい町】その2

 カフェコワンで萩尾さん一家と齋藤さんの顔合わせが
終わると、萩尾さん一家は銀座にある「お宿吉水」へと向
かいました。
 銀座へは東京メトロ大手町駅から東西線に乗り、日本
橋で銀座線に乗り換えて8分の距離ですが、ここに「やさ
しい町」の落とし穴がありました。
 地上から地下へ、まずはサンケイビルのエスカレーター
で降りようとしたのですが、いつも利用している正面玄関
横のエスカレーターが人間一人分の肩幅を想定している
のかとても狭いため、温ちゃんを乗せた車イスがエスカレ
ーターに入らないのです。そこで仕方なく階段を使って改
札口のあるフロアまで行こうとしたのですが、これが困難を
極めたのです。
 時間帯はちょうど夕方のラッシュがはじまる時間です。温
ちゃんごと車イスを抱きかかえた剛さんが階段を降りてい
きます。そしてその傍らでは勘太くんが、山のような歩行者
の足をストップさせて階段を四つんばいになって降りはじめ
たのです。
 勘太くんにとってこんなに複雑な地下鉄の通路を歩くのは
はじめてのことです。だからなのか、九州の自然児の本領
発揮とばかりに、周りの注目を独り占めして“恐竜のように”
階段を這って降りていきます。そう言えば勘太くん、最近の
一番のお気に入りは恐竜なのだそうです。華世さんが言っ
ても剛さんがっても、勘太恐竜は動じません。その姿は、ま
るでちびっこクロコダイルダンディです。逞しい剛さんは、ゆ
っさゆっさと車イスを抱いて階段を降りていきます。
 やっとのことで東西線の改札口へ着いて中へ入りましたが、
ホームへ降りるのもやはり階段しかありません。どこにでも
あると思っていたエスカレーターがないのです。そこで再び剛
さんが車イスを抱いて階段を降ります。
 電車の中では恐竜勘太くんの雄たけびにこたえるように温
ちゃんも興奮して大きな声を出します。そのたびに華世さんが
勘太くんと温ちゃんの口を手で押さえました。
「こらー、大きな声出したらいかんとよー」
 でも子供たちは、スキを見てはわざとでも大声を出そうとす
るのでした。周囲の人は、ある人はほほえましそうに笑い、あ
る人は驚嘆の眼差しを送り、ある人はすこし迷惑顔です。
 そんなことの繰り返しで日本橋で銀座線に乗り換え銀座に
着いた時には剛さんのTシャツは汗でびっしょりになっていま
した。
 モノレールから山手線の神田駅までの手厚い出迎えがウソ
のように、東京メトロは、この町の厳しい一面を見せつけたの
です。
 「お宿吉水」に着いたのは午後6時30分頃。予定の時間を1
時間近くオーバーしていました。
 出迎えてくれたのは女将さんと全館珪藻土塗りのやさしいお
宿空間です。
 この「お宿吉水」は「体にやさしいこと」にこだわった旅館です。
お布団も天然コットン製で食事も玄米とお味噌汁が基本です。
華世さんがいつも子供たちにつくっているご飯と同じ考え方なの
で、このお宿に泊まることにしたのです。
 女将さんに用意していただいた玄米の夕食をいただいた後で
女将さんは勘太くんにミニチュアカーを渡そうと準備していてく
れたのですが、食べ終わって絵本を読んでいるうちに勘太くん
は眠ってしまいました。
 東京メトロを我が物顔でのし歩いた恐竜も、さすがに疲れたの
でした。
<次号へ続く>
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by cafejien | 2006-06-14 00:41


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