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カフェ辞苑

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2006年 03月 18日

【涙月】

…三月の愛称。嬉しく悲しい別れの季節。
<例のコラム>
 三月は別れの季節です。
 今日、我が家の長女が大学を卒業しました。就いた仕事は長年の夢だった
アナウンサーです。何度もくじけかけましたが、最後の最後に福岡の放送局
に決定しました。我が子ながら、その根性には脱帽です。
 今日、もう一つの卒業がありました。僕が長年取材しているアッちゃんが南
ヶ丘保育園を卒園したのです。小雨が舞うなか、南ヶ丘保育園で行われてい
る卒園式にかけつけると、ちょうど全卒園児が揃って別れの歌を歌っていると
ころでした。
 お父さんの剛さんとお母さんの華世さんを見つけて手を振ると、二人とも赤
い目をこすって笑顔でこたえてくれました。
「よくがんばったね。おめでとう」
 アッちゃんを抱く剛さんの肩をたたいて僕がそういうと、二人とも本当に嬉し
そうな笑顔を返してくれました。
 数日前にあったとき、華世さんは卒園式の練習の最後にアッちゃんに向け
た手紙を読もうとしただけで涙があふれて号泣したと言ってましたが、今日は
どうだったのでしょう。
 華世さんの赤い目がその答えでした。
 式場から教室に戻ってきた園児たちは次から次にアッちゃんと記念撮影を
していました。ちょっとキョトンとしたアッちゃんも、友達に囲まれて嬉しそうに
笑っています。
 アッちゃんは重度の障害児ですが、剛さんも華世さんもその現実を受け入
れ、その未来を明るく育もうと一生懸命です。弟の勘太くんを入れると四人家
族です。逞しい父親、キュートな母親、かわいいアッちゃん、わんぱくな勘太
くん。傍から見ていると実にシンプルな家族です。
 アッちゃんの家族は今から数年前にプロトハウス事務局を訪れ、大分の建
築家、塩塚隆生さんの設計で住宅を建てました。その家づくりを通して僕はこ
の家族から多くのことを学びました。その思いを一冊にまとめた本が間もなく
出版されるのですが、初めての出会いから今日の卒園式まで、僕はアッちゃ
んの家族に会うたびにいつも心が洗われる思いです。
 その思いを一つの言葉でいうと「人生はシンプルなほうがいい」ということ。
タイトルも「世界でいちばんシンプルな幸福」にしました。
 心が洗われるたびに僕の目にはうっすらと涙が出てきました。その感動を一
人でも多くの人に伝えたいと思い、僕はこの本を書いたのです。
 三月は、温かな嬉しい涙が大勢の人を送り出す季節です。今日も数え切れ
ないほどの涙が卒園式の会場にあふれていました。
 2006年3月18日は、僕の長女とアッちゃんの卒業記念日です。まだ肌寒
い風に包まれた涙月。彼女たちの未来を可能なかぎり見守りつづけることを
心に誓って、僕はアッちゃんにチューリップの花束を贈りました。

by cafejien | 2006-03-18 21:50


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