2006年 03月 16日
…趣味的に仕事を楽しむこと。そんな人生。 <例のコラム> カフェコワンのある内神田一丁目は、銭形平次や人形佐七などの舞台 でもお馴染みの土地柄。お祭りや街角の神社さんに江戸時代の名残を 感じることができます。そこには、八さん熊さんの住む落語的空間が今も 生きています。 打ち合わせが終わって帰ってくる途中、角の盆栽鉢屋さんをのぞいて みると、何やらゴシゴシと磨いていらっしゃるじゃ~ありませんか。と、こ の辺りから、気分は江戸時代です。 「おやっさん何磨いてるんだい?」と聞くってーと、 「いやね、盆栽の鉢を、ちょっとね。今、別の所で焼いてるところだから、 お茶でも一杯どうよ」 というわけで、盆栽鉢屋さんとお茶をすることになりやしてね、近くのビル に立ち寄って盆栽鉢を焼いてるガス窯の火加減を見てから、ドトールコー ヒーに入ったのでした。カフェコワンが目の前なのに、鉢屋さんはヘビー スモーカー。禁煙のコワンでは長話ができないんですな。 「シシマルって名前で鉢を商ってるんだけどね、盆栽鉢はいいよ~」 「あの店にあったのでいくら位するんです?」 「5,6万だね」 「へー、いい値段しますね」 「誰もがそんな値段じゃないよ。安いのは安い」 「そうだ、名前は商標登録してます?」 「そんなのしてないよ。僕に商売のイロハを教えてくれた人がいてね、その 人が面白い人でね~、商品はマネされるようになったら本物だって言って たね。そりゃそうだ。マネされるんだから、それは本物だよね」 盆栽鉢屋さんは、神田や新宿、鎌倉にいくつもビルを持ってる家主さんで す。気が向いた時だけ盆栽鉢屋の奥に座ってタバコをふかしていますが、 後はご近所をぶらぶらして馴染みの店で油を売っていらっしゃいます。 「昔はサーフショップとかもやったんだよ。鎌倉のビルはそん時の置き土産 みたいなもんでさ。でも、サーフショップはいけないね。品が大きすぎる。品 が大きいと店も大きくないといけないから大変なんだよ。その点、盆栽鉢は いいよー、小さいからね。重ねておいておけば、どんだけでも置いておける」 「いい商売ですね~。僕も盆栽鉢はじめようかな~」と興味を示すと、 「でもね~難しいよ~。僕の場合は、いい品持ってて、それを毎日見てるか らね。やっぱり本物を見てないとね~」 「そうか、やっぱり本物ですか~」 「だよ。本物の世界だよ~」 これ以上、この話を進めると、本物を買わなければならなくなりそうなので 「で、いい中古ビルはありました?」と話題を変えると、 「ないね~。話はね、あるみたいだけど、僕のところには来ないな~。1億く らいでいいのがないかな~。下の娘にね、手ごろなのがね~」 盆栽鉢屋さんの仕事はすでに道楽の域にあります。掘り出し物のビルが 見つかったらポンとキャッシュで買うのに、普段は、小さな盆栽鉢を焼いて 言い値で売っているのです。 「本物は売れるよ。じっとしててもね。でも、あんまり焼きすぎたらダメだね。 価値が薄れるだろ。何事も適量がいいね。本物は数少ないんだよ」 なるほど、そうなのかもしれません。本当の本物は数少ないのかも。 数多くの本物をつくろうと思っていても、結果的に、人は、すこしだけの本 物しか世に残すことはできないかもしれない、と僕は思ったのです。 まあ、それでもいいではありませんか。すこしの人でも喜んでくれたら。 鉢屋さんと同じく、僕も仕事道楽なのかもしれません。
by cafejien
| 2006-03-16 00:51
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